「彼女も気づいているはずなんです」



ならいっそ一思いにふって欲しい。そう言うと、「それは違うだろ」と緑川先輩は静かにたしなめた。





「彼女なりの考えがそこにあるかもしれない。ならお前は見届けてやるべきだ」





それが唯一お前が出来る事、お前にしか出来ない事だ。緑川先輩の落ち着いた低い声が胸の中に浸透してくる。



考えって何ですか、と訊ねると、それはお前が考えろと叩かれた。つまりは頭を使えということらしい。







「でもホント…ふってほしい」







三角座りした自分の膝に頭を埋めると、またも先輩に叩かれた。(おかけで首がなんかぐきって言った)





「ふってつらいのは誰だ?お前か?お前だけか?」





緑川先輩はすうと息を深く吸い込むと、捲し立てるように口を開いた。





「聞く限りじゃその子、お前にしか心開いてねぇじゃねぇか?そうだろ? そんなお前が自分に気があるってわかったところでどうすりゃいい?ふればいいのか? それで辛いのはふられたお前か?ふられたお前だけか?」





抉られるような胸の痛みを感じる。

ふられるという言葉にも多少なりとも痛みを感じるわけだけど、それ以上に紺馬の苦痛を考えて、そこに紺馬に対しての俺の行動を足して、予想以上の紺馬の苦しみを何となく理解できた気がした。





そして、同じように今は痛いのだと思う。頭が痛いのは物事を考えたからだろう。






お前はちったぁ頭使え、と先輩は本日二度目の平手打ちをした。