手を繋ぐという事はどういうことなのだろう。


帰り道、唐突に紺馬がコンビニへと突入した。
(本当に突入という言葉が相応しいほどの入り方だった)
適当に紙パックジュースと肉まんを買うと、「公園に行く」と空いた手で俺の手を握り、引っ張った。(指細っ…)何の違和感も無く掴むものだから、一瞬何が起こっているかがわからなくなった。しかし、ショーウィンドウのガラスに映った姿を見て、一気に頭がぼうとした。


ほぼ紺馬に引きずられているような形ではあったけれど、これは確実にあれ、だ。





端から見ると恋人にしか見えないってやつだ。(ああ、俺は混乱しているんだ)





そして今思っている事を口に出せば、鉄拳が飛ぶ事だろう。急所目掛けて、彼女の細い指たちが襲い掛かってくるに違いない。だから、本当に為すがままだった。


紺馬はしっかりと手を握っていた。あまり力の無さそうな(でも本当はめちゃくちゃ力がある)細い五指でしっかりと俺の指を握りこむ。でも、俺はどうしても怖くて、彼女の手を握り返す事が出来なかった。握り返せば、本当は脆い紺馬の指がぼろぼろと崩れていくような気がしたのだ。

これはそういう意味ではなくて、と言い聞かせて、高鳴る鼓動を必死で無視した。いっそこの胸を突き破って、飛び出て、訴えてくれないだろうか。そんな馬鹿げた考えが過ぎって、本当に俺はバカなんだなと思い知らされた。紺馬の腕が俺を引っ張る。俺はこのことに対して、単純に考える事は出来なかった。あまりにも複雑で、単純に考えようとすると思考の中の紺馬は見事に壊れていく。紺馬は多分、単純に考えているのだろう。苛立ちを覚えないわけではないけれど、それ以上に紺馬を思っているので、俺はどんどん気分が悪くなった。(吐きそう…)


このまま死んでしまいたい。そしてこの指に吸い込まれて、紺馬の一部になってしまいたい。



もしかして紺馬はそう思われるのが嫌なのだろうか。





ご機嫌な鼻歌を今日も歌いながら、紺馬の手元で肉まんが軽快に揺れる。





なぁ紺馬、お前にとって思われるって何だ?

お前にとって手を繋ぐってどういう意味があるんだ?







なぁ、紺馬。