偽ることは得意だった。 見た目が大人しいらしいので、笑っていれば大概の人は騙せた。
でも彼女は騙せなかった。
「佐野さんって」
「どうしてそんな、嘘みたいな笑い方、するんですか」
彼女は山内先輩のお気に入りだった。
俺は先輩を尊敬していたし、仲間であると思っていた分、恨めしいと思う事だってあった。
しかしながら、予想外の出来事だ。
夕日に照らされた彼女の髪は綺麗に光る。 きゅっと固く閉じられた小さな唇も、大きな目も、スカートから覗くひざ小僧も、全て美しい。
美しく、強い。
「君が、先輩に気に入られるの、わかった」
山内先輩が気に入っている理由はとても簡単で、難しい。
もっと他の、人で括れない何かに思える。
「君は本当に、」
言おうとして、やめた。
山内先輩が現れたからだ。
先輩は静かに真理子ちゃんの背後に忍び寄ってきたのだ。
この人も気づいている。そしてこの人も偽っている。
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偽装する、疑い無きこの想いで |