「山内先輩にとって真理子ちゃんって何なんですか」
「じゃあお前にとって」
「何考えてるんですか」
咎めるような佐野の声に我に返った。
彼女の輝く長髪が瞼の裏でゆらゆら揺れた。
「先輩は彼女が好きなんですか」
佐野は無駄に素直だ。しかも自分に正直と来たら、さすがにお手上げ。
気に喰わない。
「俺には彼女が先輩のこと好きなように見えます」
それだけは知っていた。佐野が彼女を好きなことは知らなかったけれど、彼女が俺を好きになるはずが無い。
手に、入らない。
「なら、別に構わないですよね」
佐野の言葉に反応してしまう。
しかしそれは俺がそう信じたいだけなのかもしれない。
彼女のいない空間で、彼女を声を思い出した。
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聞こえる騒音に、耳を塞いで |