は小を兼ねる。だったら小は大に勝てないというのかな?」






山内さんの質問が頭上から降ってきた。
そのときの私はブランコに腰をかけて、足元の蟻の行列を眺めていた。
だから突然の出来事に、この声は足元の蟻たちから聞こえてきたのかと思った。






「久しぶりだね、真理子ちゃん」


夢から覚めるような感覚。適当ではないのに、そんな言葉がここに生まれた。
顔を上げると少し髪を切ったようだ、涼しげな山内さんの前髪がそよ風に揺れていた。上目遣いで会釈すると山内さんは微笑んで、私の隣に座った。
山内さんは、応えを、答えを待っている。ここだけ公園とは切り離されて、別の空間に移動したような、そんな感じがした。砂場で幼い子供たちが山のような、お城のような、そんなものを作っている。それが見えている。でも手は届かなさそうだ。滑り台に小さな行列ができている。それが見えている。でも手は、届かない。








点描画、ポツリと口から零れ出た。山内さんの視線を感じる。









「私たちはいわば、点描画のようなもので、私も山内さんも点なんです」






私たちは知らないのだ。それが何を示しているか。
青紫に染まる砂場の柵。時間は淡々と傷をつけていく。
山内さんの言葉はまだ現れない。










「点が集まれば、線になる可能性もあって、点だけでも十分な絵が描ける。でも小は大に気づいていないんですよ」








それはきっと私が誰であるかさえ教えてくれない。
呟きが風に流されれば良いと思った。













「僕は点描画も線画も好きだよ。でも点描画のほうが刺激があるんだ」


柔らかな微笑が蒼く、霞んで見えた。
もうこの場所は切り離されてなどいない。


外界は全て、青く染まって消えた。









「世界を捉えすぎると、身を滅ぼす」



ことだって在り得る、と山内さんは立ち上がって、私に手を差し伸べた。


帰ろう。山内さんの声に手を添わせて、立ち上がる。



















全てはたったひとつの意思のために、そして意志のために。










弱者であるが故に、強者となる

ただそれを、僕らは、認めたくなくて、